2012年08月号 チームワークはクラウドで
メールは古い
いまやチームワークにはクラウドが不可欠。チームワークの要はコミュニケーションだからだ。クラウドサービスをうまく使うと意志疎通の密度が上がる。最近、私の仕事は「サイボウズLive」に集約されつつある。
昔も今も、連絡の中心は電子メールだ。しかしメールには不都合な点も多い。セキュリティーが低いし、遅延や不達の可能性もある。返信が繰り返されると引用が重なって見にくくなっていく。
さらに1通1通バラバラだからやりとりの経緯が見えにくい。メールで送られてくる内容は玉石混淆だから、ときには重要なメールが埋もれてしまう。またメールは属人的なので、グループの連絡に使っていると途中から加わったメンバーに以前のいきさつを伝えるのは手間がかかる。
メールよりよいものはなんだろう。個人間のやり取りにはメッセージシステムが最適だ。相手との対話の履歴が一目で分かるから、軽い連絡を取り合うにはベストである。
マックでは長らく「iChat」を使って来たが、「メッセージ」のベータ版が出て以来それを使っている。「メッセージ」ではマック同士だけでなく、iPhone/iPadともメッセージの交換ができるのだ。
またFacebookのメッセージ機能を使う機会も多い。twitterのダイレクトメッセージやSkypeも文字での会話に重宝だ。
しかしメッセージシステムはどちらかというとフロー型の通信手段である。その場限りで流れ去っていく会話をWeb経由で交わしているのだ。したがって情報をストックしていく目的には向いていない。
その点、クラウドサービスにはストック型のものが多い。サイボウズLiveもそのひとつ。その利便性とわかりやすさは、初心者にも敷居が低い。メールアドレスさえあれば誰でも無料で使えるのだ。
20名までのグループならいくつでも作れて、ずっと無料。予算のない小規模の団体や非営利団体にも最適だし、学生団体や研究会、そして家族の連絡にも便利だ。業界最大手のサイボウズ㈱が運営しており、安定性も抜群である。
グループウェアを使おう
サイボウズLiveとは一言でいうと、「グループウェアの枠を越えたグループウェア」である。企業などで情報共有に使われるグループウェアは社内専用。取引先など社外の人とのやりとりには使えない。社内のシステムに社外の人を加えるわけにはいかないからだ。
しかし、継続的に取引のある相手とグループウェアを使えたら仕事もコミュニケーションも円滑になる。そこでサイボウズLive。
一般的なグループウェアの「社内限定」という枠を越えたさまざまな人の輪で、グループウェアの利便性を享受できるのだ。柔軟性の高い設計がされているから、ビジネスだけでなくいろいろな人間関係に応用が利く。
まずはアカウントを作成しよう。画面右上の「ユーザー登録をする(無料)」を押し、メールアドレスを入力して「送信する」を押せばそのアドレスにメールが届く。届いたメールに記載されているURLにアクセスしたら、パスワード、氏名、性別を入力し、「利用規約に同意して登録する」ボタンを押す。これだけだ。
あとは「グループを作る」ボタンを押して、メンバーに加えたい仲間のメールアドレスを並べて、グループに招待すればいい。
FacebookやmixiといったSNSとは異なり、見ず知らずの人と友だちになることは目的としていない。どんなグループが存在するのか、そこに誰が入っているかなどが他の人から見えることは一切ないのだ。業務利用でもプライベートでも、安心感が高い。
だからアカウントの作成時に個人情報をあれこれ書かされたりしないのだ。また煩わしい友達申請もないし、目障りな広告表示もない。シンプルで潔いシステムなのだ。
無料とはいえ、グループウェアとして基本となる4つの機能が揃っている。カレンダー上でスケジュールを共有する「イベント」、仕事の担当者を定めたり進捗を共有する「ToDoリスト」、打ち合わせ、連絡、議論のための「掲示板」、ファイルをシェアする「共有フォルダ」。
またグループのメンバー全員で情報を共有するこれらの機能に加えて、個人宛の「メッセージ」機能がある。前述のメッセージシステムが組み込まれているのだ。
これを使うと、グループとは無関係に、1人あるいは複数の相手とメッセージを交わせる。一連のやりとりがトピックごとに一画面にまとまって表示されるから話の流れが一目瞭然。グループの掲示板と同様のインターフェイスで個人間の対話もできるのだ。
多彩な使い途
サイボウズLiveの用途は広い。現在私は21個のグループを運用している。学部と大学院のゼミなど教育関係、ゼミOB会の幹事会、顧問をしている部活の運営、学部や学科の教職員間、研究会、大学内の各種委員会、IT関連の業務、ボランティアをしているNPO──。
例えばゼミのグループでは、細かい連絡の他、主として資料の共有に使われている。毎週、研究の対象となる判例の原文や各班が用意する報告のハンドアウトがPDFで掲載される。ゼミの教室で私はそれらをマックやiPadで閲覧するのだ。
同様に、委員会でも会議資料が事前にPDFで事務スタッフによって掲載される。会議終了後は議事録が掲示板に置かれ、委員が閲覧して修正が施されたあと、正式の議事録として登録される。
一方、学部や学科の教員のグループでは、掲示板の利用が圧倒的に多い。教育から大学運営に至るまで、何かを変えてより良くしていこうという気持ちを共有しているため、そのための問題提起や議論が活発になされているのだ。
個々の意見は長文が多く、これらをすべて教授会の場で行っていたら教授会が何時間もかかってしまうであろう。サイボウズLiveを通して意見交換が行われているおかげで、教授会自体も効率的に進められるのだ。最近では教授会や学科会議の場で、「ご意見はサイボウズLiveにお寄せください」と締めくくられることも多くなった。
原稿の共同執筆にも効果的だ。トピック冒頭の「本文」は「変更する」を押して何度でも編集可能。「共同編集」にチェックを入れればグループのメンバー全員で編集できるのだ。
この連載でも、編集部との原稿の送受信や修正、校正のやりとりに重宝している。書き込みはすべて「書式編集」できるため、文字に色を付けたり強調するなど、基本的な書式を付加できるので、修正箇所を指摘することも簡単なのだ。
私はサイボウズLiveのページをSafariのブックマークバーで左から9つ目に置いている。コマンド+9で開けるからだ。
聞くところによると、このシステムを開発している方々はマックユーザーとのこと。使いやすさの秘密はその辺にあるのかもしれない。シンプルにしてユーザーの工夫や創造性を喚起する使い勝手のよさに、開発者のマインドが表れているのだ。